V-Bend の力学

下顎 第一大臼歯〜中切歯間 ─ Burstone の原則

Question
L1(下顎中切歯)を圧下したい。
V-Bendはどの位置に入れるべきか?
下顎歯槽骨 第一大臼歯 L1 A B C 挺出 圧下
A:前歯寄り
前歯が挺出、臼歯が圧下
挺出 圧下
臼歯 → 圧下
前歯 → 挺出
B:臼歯寄り ★正解
臼歯が挺出、前歯が圧下
挺出 圧下
臼歯 → 挺出
前歯 → 圧下
C:中間
垂直力ゼロ、モーメントのみ
垂直力 = 0
両方 → 回転のみ
Burstoneの原則

V-Bendに近い歯 = 挺出(引き出される)
V-Bendから遠い歯 = 圧下(押し込まれる)

∴ 前歯を圧下 → 前歯から遠い B(臼歯寄り) にベンド

なぜそうなる? ─ シーソーで考える

ワイヤー = シーソーの板、V-Bend = 支点

支点を臼歯寄りに置く。近い臼歯は跳ね上がり(挺出)、遠い前歯は沈む(圧下)。

支点(V-Bend) 臼歯 近い 挺出 前歯 遠い 圧下 近い側 → 上がる / 遠い側 → 沈む

シーソーの支点を自分のすぐ近くに置くと、自分は跳ね上がり、遠い相手は沈んだまま

物干し竿でも同じこと

竿の臼歯寄りを下から押し上げたら?

指の近くの台(臼歯)は浮き上がり、遠い台(前歯)は押し付けられる。

① まっすぐ = 力ゼロ

臼歯 前歯 力ゼロ

② 臼歯寄りを押し上げる = V-Bend

指で押し上げ(V-Bend) 臼歯 前歯

③ 近い側が浮き、遠い側が沈む

浮く = 挺出 沈む = 圧下
V-Bendに近い歯 = 挺出
V-Bendから遠い歯 = 圧下

シーソーも物干し竿も同じ。これだけ。

応用 ─ Anti-Spee Curve(リバースカーブ)も同じ原理

V-Bend = 1点の折れ目 → リバースカーブ = 連続した折れ目の集合

スピー湾曲の是正でワイヤーにリバースカーブを入れるのも、本質的にはワイヤーの弾性復元力。V-Bendが臼歯寄りに連続して分布しているのと同じ。

V-Bend(1点)vs リバースカーブ(連続)

V-Bend(ピンポイント) リバースカーブ(アーチ全体に分布) 臼歯 前歯 V-Bend 挺出 圧下 臼歯 前歯 挺出 圧下 ← 連続したV-Bendの集合 →
V-Bend = 1点の折れ目 → 2歯間のピンポイント制御
リバースカーブ = 連続した折れ目 → アーチ全体に分散した力

どちらも「ワイヤーがまっすぐに戻ろうとする弾性力」。原理は同じ。

スピー湾曲が深い症例でリバースカーブを入れると:
臼歯部 → 挺出(ワイヤーのカーブが臼歯寄りで強い = V-Bendに近い)
前歯部 → 圧下(カーブから遠い = V-Bendから遠い)

結果としてスピー湾曲がフラットになる。

凡例

圧下(intrusion)
挺出(extrusion)
支点 / ベンド